AI驚き屋は1958年からいた!ニューヨーク・タイムズも煽った過去のハイプサイクル(ep.42)
おちつきAIラジオ 第42回(EP.042)/配信日: 2026.02.13/再生時間: 01:01:16
この回の概要
第42回は「AIの歴史を学ぼう AIブームはなぜ2度も終焉したのか」というテーマで、過去2回のAIブームがなぜ盛り上がり、なぜ冷え込んでいったのかを振り返る回です。この回を聴くと、第1次・第2次AIブームがそれぞれどんな技術と発想で始まり、何が原因で下火になったのか、そして今の第4次AIブームとの共通点や教訓がわかります。内容はAI関連の資格試験「G検定」の出題範囲にも重なる内容として紹介されています。
しぶちょーはまず、AIの起源を数学者チューリングが投げかけた「機械は思考できるのか」という哲学的な問いから説明しました。思考そのものの定義を避け、人間と機械のやり取りを人間が見分けられなければ機械は思考していると見なす「チューリングテスト」という思考実験を紹介し、この問いが1956年のダートマス会議につながり、そこで初めて「人工知能」という言葉が誕生したと解説しています。チューリング自身は1954年に亡くなっておりダートマス会議には参加していませんが、その問いに影響を受けた研究者たちが集まり、AIという学問分野を立ち上げたという経緯が紹介されました。
第1次AIブームは「推論と探索の時代」と呼ばれ、人間が記述したルールやアルゴリズムに従って迷路やボードゲーム、数学の定理証明などのシンプルな問題を解く仕組みが中心でした。象徴的な存在として1966年に開発された世界初のチャットボット「イライザ」が紹介され、単純なパターンマッチングにすぎないにもかかわらず、利用者が人間のように理解されていると錯覚してしまう「イライザ効果」が生まれたことが語られています。当時の研究者やメディアが過度に期待を煽ったことで研究費が集まった一方、現実の複雑な問題や機械翻訳、初期のニューラルネットワーク(パーセプトロン)では通用せず、1970年頃に第1次ブームは終焉しました。しぶちょーは、研究費を得るために期待を煽った研究者と、その熱狂を部数につなげたメディアの構図が今の生成AIブームにも通じると指摘し、1958年のニューヨークタイムズがAIはまもなく意識を持つと報じた記事を例に挙げています。
第2次AIブームは「知識表現の時代」で、「知識こそが力なり」というスローガンのもと、医師や専門家の知識をルールとして大量に入力する「エキスパートシステム」が発展しました。病気の診断など特定分野では高い精度を発揮したものの、暗黙知を言語化できないことやルール同士の矛盾、専門外の状況に対応できない「フレーム問題」によって、コストに見合わなくなり再び冬の時代を迎えたと説明されています。この時代に始まり今も続く「サイクプロジェクト」にも触れ、あらゆる常識知識を人手で40年以上入力し続けている取り組みとして、創始者ダグラス・レナート氏が2023年に亡くなった後も継続していることが紹介されました。しぶちょーは、確率的に言葉を生成する現在の生成AIとは対照的に、人間が確実な知識だけを与え続けているためハルシネーションが起きにくい仕組みだと解説し、かねりんは40年間コツコツと知識を積み上げ続けた執念に驚きと敬意を示していました。
しぶちょーは、両ブームに共通するのは期待と現実のギャップであり、驚きを煽る「驚き屋」に対して冷静さを促す「落ち着き屋」の存在がバランスを取るために重要だったのではないかという解釈を示しました。かねりんはこの話を聞き、自分たちの番組が目指す「落ち着いて学ぶ」というコンセプトが、AIブームを終焉させないための冷却装置としての役割を果たしているのではないかと結びつけ、番組の存在意義を改めて確認できたと感想を述べています。楽しさ重視で始めた速報回などに軸がぶれているのではと感じていたことも打ち明け、歴史を踏まえて100年後にも残るコンテンツを目指すという当初のビジョンと今の活動がつながったと語り、2人にとって印象深い回になったことがうかがえます。
最後に、第3次AIブーム以降の機械学習やディープラーニングの話は改めて別の回で深掘りする予定であることが伝えられ、今回は歴史を振り返ることで現在のAIブームの立ち位置を見直す回として締めくくられました。かねりんは、自分たちのように熱狂に流されず冷静さを促す立場の人たちがいたからこそ第4次AIブームが終焉せずに続いているのだとしたら、それは歴史に記録される役割ではないかと語り、しぶちょーもその視点に賛同し、これからも派手な流行に乗るだけでなく地に足のついた発信を続けていきたいという思いを共有していました。
目次(タイムスタンプ)
- 00:00 オープニング:おちつきAI、本日のテーマ発表
- 01:21 今は第4次?意外と知らないAIブームの歴史と回数
- 04:34 チューリングの哲学的な問い「機械は思考できるのか」
- 05:38 チューリングテスト:人間を騙せればそれは知能か?
- 08:28 1956年ダートマス会議、AIという言葉が誕生した瞬間
- 12:52 第1次ブーム:迷路を解く「推論と探索」のシンプルな力技
- 15:05 世界初のチャットボット「ELIZA」と驚き屋の歴史
- 24:36 現実の壁に衝突:おもちゃの問題しか解けずブーム終焉
- 31:18 第2次ブーム:「知識こそ力なり」専門家知識の注入
- 36:52 40年以上続く狂気の「サイクプロジェクト」と手入力の執念
- 49:36 歴史に学ぶ賢者の視点:期待と現実のギャップをどう埋めるか
- 54:18 100年後の教科書に残る「冷や水」としてのポッドキャスト
- 01:00:29 エンディング:#おちつきAI で感想をお待ちしています
この回でわかること(Q&A)
チューリングテストとは何ですか?
思考とは何かという哲学的な問いを避け、人間と機械が文字でやり取りをしたときに判定者がどちらが人間かを見分けられなければ、その機械は思考していると見なそうという思考実験です。数学者チューリングが提唱し、AI研究の出発点になったとされています。
第1次AIブームはなぜ終わったのですか?
ルールやアルゴリズムを記述することで迷路やボードゲームなどのシンプルな問題は解けても、現実の複雑な問題や機械翻訳、初期のニューラルネットワークでは通用しないことが明らかになり、過度な期待が外れて研究費が打ち切られ、1970年頃に冬の時代を迎えました。
エキスパートシステムとは何ですか?
医師や専門家の知識をif-thenのようなルールとして大量に入力し、専門分野の判断を代行させようとした第2次AIブームの中心的な仕組みです。病気の診断などでは高い精度を発揮しましたが、暗黙知の言語化やルールの管理コストが課題になりました。
サイクプロジェクトとはどんな取り組みですか?
1984年に始まった、世界中の常識的な知識を人の手でコンピューターに入力し続けているプロジェクトです。創始者のダグラス・レナート氏が2023年に亡くなった後も企業の製品として開発が続けられており、ハルシネーション対策などに使われているとされています。
フレーム問題とは何ですか?
あらかじめ想定された枠の中でしか判断できず、現実世界のように想定外の状況が無限にある場面では対応できなくなってしまうAIの課題のことです。第2次AIブームのエキスパートシステムが専門分野の外に対応できなかった原因として紹介されています。
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「おちつきAIラジオ」は、日々のAIトピックを現役のAIエンジニア(しぶちょー)と元刑事のポッドキャストプロデューサー(かねりん)がやさしく解説する対談番組です。