【新春】最強のAI大喜利を決めるAI-1グランプリ開催!ChatGPT vs 自作ファインチューニングモデル(ep.30)
おちつきAIラジオ 第30回(EP.030)/配信日: 2026.01.02/再生時間: 01:15:47
この回の概要
今回は「科学系ポッドキャストの日」という毎月の合同企画に参加し、今月のホスト番組「奏でる細胞」が出したテーマ「笑い」をAIと絡めて掘り下げる回です。この回を聴くと、AIがなぜ人間のようなユーモアを生み出せないのか、その科学的・技術的な理由と、AIにユーモアを学習させる最新の研究、そしてしぶちょーが自作したファインチューニングモデルによる大喜利対決の結果までが分かります。
冒頭ではChatGPT 5.2やGeminiに「面白いこと言って」と無茶振りした実例が紹介されます。ChatGPTは意味不明な比喩を返し、Geminiは「AIが足りない」というベタなダジャレを返すなど、いずれも笑いには程遠い結果でした。しぶちょーはユーモアの実現が「AI完全問題」と呼ばれるAI研究における最難関のタスクの一つであり、汎用人工知能(AGI)実現の壁になっていると説明します。かねりんは「予測できたら笑えない」と、予測を裏切ることが笑いの本質ではないかと自ら分析する場面もありました。
笑いのメカニズムとして紹介されたのが「良性違反理論」です。何らかの規範からの逸脱(違反)があり、それが安全・無害だと認識されたときに笑いが生まれるという理論で、子供がタブーな言葉で笑うことや、緊張と緩和のギャップなどが例に挙げられます。この違反の内容は国や文化によって全く異なり、日本の自虐ネタや欧米の皮肉・ブラックジョークなど、笑いのツボは文化ごとに大きく違うことも語られました。
AIがユーモアを苦手とする理由として、まずAIの安全性トレーニングが差別的・攻撃的な表現を避けるよう調整されているため、ユーモアに必要な「違反」自体を起こしにくいという構造的なトレードオフが指摘されます。さらにLLMは次に来る確率の高い単語を予測する仕組みのため、意外性のある「ハズレ値」の表現に向かいにくいこと、そしてジョークの創作とハルシネーション抑制が本質的に相反することも挙げられました。
研究紹介では、一橋大学が2025年に発表した、大喜利を題材にLLMのユーモア能力を新規性や共感性など複数の評価軸で分析した論文が取り上げられます。結果、GeminiなどのLLMは人間の初級から中級レベルの面白さには達しているものの、人間の生活や文化に根ざした「あるある」的な共感性のスコアは著しく低く、人間には理解しにくい独自の面白さ(論文内で「エイリアンセンス」と呼ばれる)に偏る傾向があると分かりました。また日本語のダジャレ生成研究では、意味と音韻という二つの制約を同時に満たす必要があるため、音を意識せず文字列を処理するAIには本質的に難しいタスクであることが説明され、良くないダジャレを教材として学習させる手法である程度の改善が見られたことも紹介されました。
ダジャレの話題からは、なぜ中高年になるとダジャレを言いたくなるのかという脱線も生まれました。しぶちょーは、年齢を重ねると語彙力や言語能力自体はむしろ向上する一方、意味から言葉を検索する速度は遅くなり、逆に音の響きから言葉を検索する速度は落ちないため、思いついた瞬間にダジャレが浮かびやすくなるという説を紹介します。さらに前頭葉による発言の抑制機能が弱まることで、思いついたことをそのまま口に出しやすくなる傾向も加わり、いわゆる親父ギャグが生まれやすくなると解説されました。
番組後半では、大喜利で使われるファインチューニング技術を実演しています。しぶちょーはオープンソースの日本語モデル「Llama3-ELYZA-JP-8B」に大喜利データセットを追加学習させた自作モデルを用意し、ChatGPT・Claude・Geminiと合わせた4モデルの回答をかねりんが匿名で審査する「AI-1グランプリ」を開催しました。「低予算すぎるお化け屋敷、どんなお化け屋敷」というお題に対し、しぶちょーの自作モデルが「入場は無料だが出口は有料」という文脈に沿った回答で1位を獲得し、タスクを絞ったファインチューニングによってユーモアの精度を高められることが実証されました。
最後にかねりんは「ユーモアは最強の武器である」という書籍を紹介しつつ、AIがユーモアを本当に理解できるようになれば、文化的背景を踏まえた同時通訳や、より深いコミュニケーションが可能になるとまとめられました。番組は2025年9月に始まったばかりであることに触れつつ、2026年最初の配信としてリスナーへの感謝と、番組をさらに大きく成長させていきたいという抱負が語られて締めくくられました。
目次(タイムスタンプ)
- 00:00 新年のご挨拶と「科学系ポッドキャストの日」
- 03:27 AIに「面白いこと言って」と頼んだ悲劇
- 07:08 AIにとってユーモアは「AI完全」な難問
- 10:37 人はなぜ笑う?「良性違反理論」と緊張の緩和
- 18:30 AIが面白くない技術的理由:安全装置と確率論
- 29:40 最新研究:AIの笑いは「エイリアンセンス」?
- 41:12 脳科学:なぜおじさんはダジャレを連発するのか
- 52:00 激闘!自作モデルvs大手LLM「AI大喜利対決」
- 60:40 特化型AIを作るファインチューニングの威力
- 65:37 書籍紹介『ユーモアは最強の武器である』
- 70:46 今年の目標は「0を1つ増やす」10倍成長
今回の要チェックキーワード
- AGI(Artificial General Intelligence)
- 人間と同等、あるいはそれ以上の汎用的な知能を持つとされるAIの概念。特定タスクに特化した現在のAIとは異なり、未知の問題にも柔軟に対応できるとされる。
- AI完全な問題(AI-Complete Problem)
- その問題が解けるなら、人間並みの知能を持つAIが実現していると言えるような課題。自然言語理解や常識推論などが代表例で、AGI研究の難しさを象徴する概念。
- 良性違反理論(Benign Violation Theory)
- 人が「笑い」を感じるのは、何かの規範が破られているが、それが安全・無害だと認識されたときだとする理論。ユーモア研究や大喜利の構造を説明する心理学モデル。
- 大喜利AI
- お題に対して人を笑わせる回答を生成することを目指すAI。言語理解だけでなく、文脈・ズレ・意外性といった高度な判断が必要で、「AIはユーモアが苦手」という議論の中心的題材。
- 株式会社わたしは
- 大喜利AIの開発・研究で注目を集めた日本のスタートアップ。AIとユーモアという困難なテーマに挑戦し、AI研究の限界と可能性の両方を示した存在。
- ファインチューニング(Fine-Tuning)
- 事前学習済みのAIモデルを、特定のデータや目的に合わせて追加学習させる手法。専門分野への適応や出力傾向の調整に使われる。 —----------------------------
この回でわかること(Q&A)
なぜAIは人間のようなユーモアを生み出すのが苦手なのですか?
安全性トレーニングによって規範からの逸脱(ユーモアに必要な違反)を起こしにくいこと、LLMが確率の高い無難な表現を選ぶ仕組みであること、ハルシネーション抑制とジョークの創作性が相反すること、ユーモアに特化した学習データが不足していることなど、複数の理由が指摘されています。
良性違反理論とは何ですか?
何らかの規範からの逸脱(違反)があり、それが安全で無害だと認識されたときに笑いが生まれるという理論です。子供がタブーな言葉を口にして笑うことなどが典型例として紹介されています。
LLMのユーモアと人間のユーモアの違いは何ですか?
一橋大学の2025年の研究によると、LLMは新規性のある回答は作れる一方、人間の生活や文化に根ざした共感性(あるあるネタ)のスコアが著しく低く、論文内で「エイリアンセンス」と呼ばれる独自の面白さに偏る傾向があるとされています。
なぜダジャレはAIにとって難しいタスクなのですか?
ダジャレは意味的な制約と音韻的な制約を同時に満たす必要がありますが、AIは文字列を処理する際に音の響きを意識していないため、その結びつきを見つけるのが難しいとされています。良くないダジャレを学習データとして使う手法である程度の改善が見られたことも紹介されました。
番組内の大喜利対決「AI-1グランプリ」の結果はどうなりましたか?
ChatGPT・Claude・Gemini、そしてしぶちょーが自作したファインチューニングモデル(Llama3-ELYZA-JP-8Bベース)が「低予算すぎるお化け屋敷」というお題で対決し、しぶちょーの自作モデルが「入場無料、出口有料」という回答で1位を獲得しました。
関連リンク
- [書籍]ユーモアは最強の武器である
- Assessing the Capabilities of LLMs in Humor: A Multi-dimensional Analysis of Oogiri Generation and Evaluation (ユーモアにおけるLLMの能力評価:大喜利の生成と評価の多次元分析)
- 学習済み言語モデルからの生成データを活用した文駄洒落化の性能改善
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「おちつきAIラジオ」は、日々のAIトピックを現役のAIエンジニア(しぶちょー)と元刑事のポッドキャストプロデューサー(かねりん)がやさしく解説する対談番組です。