【国産LLM】後出しジャンケンで挑む日本のAI開発とAI推進法の現在地を解説(ep.26)
おちつきAIラジオ 第26回(EP.026)/配信日: 2025.12.19/再生時間: 01:07:58
この回の概要
今回は「国産LLMを知ろう」をテーマに、日本のAI開発が実は法制度から技術開発まで急速に進んでいることを解説する回です。この回を聴くと、日本のAI推進法や国のプロジェクト「GENIAC」、国産LLMを開発する企業の具体的な取り組みが分かり、日本は決してAIで出遅れているわけではないという実態がつかめます。
しぶちょーはまず、政党チーム未来の安野貴博氏が国会で国産LLM開発に向けた良質な日本語データセットの必要性を訴え、NHKの過去の放送アーカイブをデータセットとして活用できないかという議論が11月末に行われたことを紹介します。マルチモーダル化が進む中でテキストだけでなく動画などのデータも重要になっており、政治の現場でもリアルタイムに国産LLMを巡る議論が進んでいることが示されました。
続いて、日本初のAIに特化した包括的な法令「AI推進法」が2025年5月28日に国会で可決、6月4日に交付されたことが紹介されます。この法律は罰則や厳しい義務を課す規制型ではなく、ガイドラインを整備してAIの研究開発と活用を計画的に進める推進型の法令です。基本方針として、政府主体でのAI利活用の加速や、世界で最もAIを開発・活用しやすい国を目指すという人工知能基本計画の策定が進められています。
日本の勝ち筋については、ChatGPTやGeminiのような巨大な汎用モデルで規模を競うのではなく、医療やものづくりなど日本の産業基盤に特化した専門特化型の国産LLMを作る戦略が説明されます。しぶちょーはドラゴンボールのトランクスとベジータの例えを使い、力任せに巨大化して身動きが取れなくなるトランクス的なアプローチではなく、無駄のない専門特化した戦い方こそが日本の勝ち筋だと語ります。日本のGPU保有数は海外の大手企業と比べて桁違いに少ないものの、GPUの性能価格比がこの数年で劇的に向上しているため、絶望的な差ではないという指摘もありました。
デジタル庁が進める政府向けAI「現内(ゲンナイ)」プロジェクトでは、政府利用のための国産大規模言語モデルを公募するコンペジションが12月から始まっていることが紹介されます。また経済産業省が主導する支援プロジェクト「GENIAC」では、計算資源の提供やデータ実証の場、企業間のマッチング支援を通じて国産LLM開発を後押ししており、合計8億円規模の助成が行われています。第一次採択の代表例として、東京大学松尾研究室からのスピンアウトであるELYZAは、オープンソースのLlamaを土台にパラメータ数を独自に拡張するデプスアップスケーリングという手法で日本語性能を高めました。ABEJAは、パラメータを増やすとコストがかさむという課題に対し、比較的小さなモデルにRAGとエージェントの仕組みを組み合わせることで、経済合理性の高い特化型モデルを実現しています。トランスフォーマーの発明者の一人であるライオン・ジョーンズ氏がCTOを務めるSakana AIは、知識蒸留やスパース化といった技術を用い、巨大なモデルに頼らない小型で高精度なモデルの開発に取り組んでいることが紹介されました。
NTTのつづみ、NECのことみ、富士通の高根、ソフトバンクの更科など、大企業による国産LLM開発も進んでいます。しぶちょーは工業高校の教員向け講演で3Dモデル生成AIをデモした際、それが中国製サービスだったため学校のネットワークで使用できなかった体験を語り、教育や行政の現場では安心して使える国産サービスが不可欠だと実感したエピソードを紹介しました。
最後に、日本のAI戦略は世界を席巻する勝ち筋ではなく、海外へのお金の流出を防ぎ国内で自給する「負けない戦略」であるとまとめられます。かねりんは、プログラミングのような言語に依存しないタスクは海外のモデルが有利な一方、日本語の文章作成や行政サービスのような分野では国産LLMが力を発揮するはずだと整理しました。しぶちょーは、法律や特許のように条文や過去の判例を体系的に積み上げて判断する分野は、人間には読みにくくてもAIにとっては扱いやすいフォーマットであり、裁判手続きの合理化などにも国産LLMが活きてくる可能性があると語ります。派手な破壊的イノベーションというより、行政や専門分野の仕組みを地道に良くしていく形で恩恵が広がっていくだろうという見通しを示し、今後の国産LLMの発展に期待を寄せて回を締めくくりました。
目次(タイムスタンプ)
- 00:00 驚き疲れたあなたへ送る「国産LLM」の現在地
- 04:35 チーム未来・安野貴博氏が見据える日本語データの重要性
- 10:14 2025年可決!世界でも珍しい「AI推進法」の中身
- 16:39 「スモールJAPAN」世界と戦わない日本の勝ち筋
- 20:08 ドラゴンボールで例えるChatGPTと国産AIの違い
- 23:36 GPU不足は絶望?技術の進化がもたらす逆転の可能性
- 30:31 懸賞金8億円?経産省主導の「GENIAC」プロジェクト
- 35:14 注目の国産ベンチャー:ELYZA、ABEJA、Sakana AI
- 50:41 大手企業の逆襲?ソフトバンク・NTT・NECの動向
- 56:22 学校でAIが使えない?教育現場で痛感した国産の必要性
- 01:07:13 エンディングトーク
今回の要チェックキーワード
- AI推進法案
- AIの研究開発・社会実装を促進するための法制度の総称。イノベーションを後押ししつつ、リスク管理や国際競争力の確保を両立させることを目的としている。
- 経済産業省 GENIAC(Generative AI Accelerator Challenge)
- 経済産業省が主導する生成AIの開発支援プロジェクト。計算資源や資金、実証の場を提供し、日本発の基盤モデル創出と産業競争力強化を狙う取り組み。
- ガバメントAI「源内(げんない)」
- 日本政府が開発・活用を進める行政向け生成AI。行政文書作成や調査業務の効率化を目的とし、安全性や情報管理を重視した設計が特徴。 —----------------------------
この回でわかること(Q&A)
AI推進法とはどんな法律ですか?
2025年5月28日に国会で可決、6月4日に交付された日本初のAIに特化した包括的な法令です。罰則や厳しい義務を課す規制型ではなく、ガイドラインを整備してAIの研究開発と活用を計画的に進める推進型の法律だと説明されています。
日本の国産LLM戦略はChatGPTやGeminiとどう違いますか?
巨大な汎用モデルで規模を競うのではなく、医療やものづくりなど特定の産業分野に特化した専門特化型のモデルを作る戦略です。番組ではドラゴンボールのトランクスとベジータに例えて、無駄のない専門特化した戦い方が日本の勝ち筋だと説明されています。
GENIACとはどんなプロジェクトですか?
経済産業省が主導する生成AI開発支援プロジェクトで、計算資源の提供やデータ実証の場、マッチング支援などを通じて国産LLM開発を後押ししています。合計8億円規模の助成が行われており、ELYZAやABEJA、Sakana AIなどが採択企業として紹介されています。
日本はGPUの保有数で海外に対抗できるのですか?
産業技術総合研究所などの保有GPU数は1000機程度で、AWSやGoogleなどの数万機と比べると桁違いに少ないと説明されています。ただしGPUの性能価格比がこの数年で劇的に向上しているため、最新GPUを導入すれば差を縮められる可能性があると番組では語られています。
国産LLMは私たちの生活にどう役立ちますか?
行政サービスや法律、特許などドメイン知識が重要な分野で活用が期待されています。番組では、公立の学校で中国製AIサービスが使えなかった経験を例に、教育や行政の現場では安心して使える国産サービスが不可欠だと語られました。
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「おちつきAIラジオ」は、日々のAIトピックを現役のAIエンジニア(しぶちょー)と元刑事のポッドキャストプロデューサー(かねりん)がやさしく解説する対談番組です。