生成AIを使いこなす「プロンプトエンジニアリング」ホントとウソ(ep.10)
おちつきAIラジオ 第10回(EP.010)/配信日: 2025.10.24/再生時間: 01:07:05
この回の概要
この回は「プロンプトエンジニアリング」をテーマに、AIへの指示の出し方でなぜ回答の精度が変わるのかを、その歴史と誰でも使える普遍的な五つの法則で解説する回です。聴くと、フューショットプロンプティングやチェーンオブソートといった基礎知識に加え、ツールが変わっても通用する「方向性を示す」「出力形式を指定する」「例を示す」「品質を評価する」「タスクを分割する」という五原則が分かります。
冒頭、しぶちょーは「21世紀で最もセクシーな職業」という切り口から話を始めます。以前はデータサイエンティストがそう呼ばれていたが、生成AIの普及後はプロンプトエンジニアがその座についたという紹介から、今回のテーマ「プロンプトエンジニアリングについて学ぼう」へとつながっていきます。
歴史パートでは、プロンプトエンジニアリングという概念自体は2020年5月28日にOpenAI所属の技術者らが発表した論文に端を発すると解説されます。それまでの言語モデルは翻訳や要約などタスクごとにファインチューニングという追加学習が必要でしたが、この論文で「指示文を変えるだけで回答精度が上がる」ことが見つかりました。ここで登場したのが、回答例をいくつか示してから答えさせる「フューショットプロンプティング」です。例を一切示さない方法は「ゼロショット」、例を一つだけ示す方法は「ワンショット」と呼ばれます。
続いて紹介されるのが「チェーンオブソートプロンプティング(思考の連鎖)」で、最終的な答えだけでなく、そこに至る思考の過程を例として示すことで回答精度が上がる手法です。さらにその発展形として「ゼロショットチェーンオブソート」が紹介され、「Let's think step by step(段階的に考えてください)」という一文をタスクに添えるだけで回答精度が上がることが分かったと語られます。
しぶちょーは10月に出た最近の論文として「無礼なプロンプトの方が丁寧なプロンプトよりも精度が高い」という研究も紹介します。論文の結論は、無礼な言葉そのものが重要なのではなく、丁寧な表現は曖昧さや婉曲表現を含みやすくタスクの焦点がぼやけてしまう一方で、命令的で攻撃的な文章はモデルにやるべきことを明確に伝えやすいため、というものです。ここから「はっきり言う」ことの重要性へと話がつながっていきます。
番組後半では、そうした知見を踏まえた「プロンプトの五大原則」が順に解説されます。第一は「方向性を示す」で、ロールプレイングの手法を使い、どんな立場でどんな目的の回答が欲しいかを具体的に言語化することです。例として「あなたはうちの顧問税理士です。初心者にも分かりやすく、例え話を交えて雑誌の記事風の文体で説明してください」といった指示が挙げられ、目的や立場を明示するほどタスクの曖昧さが減ると説明されます。第二は「出力形式を指定する」で、表や箇条書き、文章、スライド構成など欲しい回答の形を明示することの重要性が語られます。しぶちょー自身が「4分喋れる原稿を考えて」と指示して番組の叩き台を作っている実例も紹介されます。第三は「例を示す」で、これは前述のフューショットプロンプティングの応用にあたり、例を入れすぎるとその方向に強く引っ張られる点にも注意が促されます。
第四の原則「品質を評価する」では、自分が作ったプロンプトが本当に望む結果を導けているかを検証し修正していく重要性と、AI自身にプロンプトを作らせたり評価させたりする「メタプロンプティング」という手法が紹介されます。しぶちょーは、番組の概要欄を自動生成するプロンプトを、音声データと完成した概要欄の例をGeminiに渡して作らせた実例を語ります。第五の原則は「タスクを分割する」で、一度に全てを求めず段階的に考えさせることが安定した回答につながると説明されます。
終盤では、OpenAIのサム・アルトマンの発言として「生成AIを使いこなす鍵はプロンプトのハックを見つけることではなく、アイデアの質と自分自身が何を求めているかを理解することだ」という言葉が紹介されます。五原則も突き詰めれば、自分の望むアウトプットを言語化できているかどうかに行き着くという結論に至ります。AIへの丁寧な言葉遣いと電力消費、回答精度の関係についても雑談を交えながら触れられ、番組は「プロンプトとは自分自身を見つけること」という言葉で締めくくられます。
目次(タイムスタンプ)
- 00:00 21世紀で最もセクシーな職業は?
- 01:58 今日のテーマ:プロンプトエンジニアリングを学ぼう
- 02:37 プロンプトエンジニアリングとは?指示の工夫
- 03:16 プロンプト界隈は落ち着かない?流派と進化
- 04:31 AIが進化しても汎用的に使える知識とは?
- 06:10 意外と浅い?プロンプトエンジニアリングの歴史
- 07:44 始まりはOpenAI論文「指示文で精度が上がる」
- 09:43 「Few-Shot」とは?回答例を示す技術
- 13:47 思考の連鎖「チェーン・オブ・ソート」とは?
- 18:58 魔法の言葉「Let's think step by step」
- 20:42 最新論文「無礼なプロンプトの方が精度が高い」?
- 22:42 論文の真相:丁寧な言葉は曖昧で焦点がぼやける
- 25:08 概要欄に重要単語を書きます!
- 28:00 普遍的に使える【プロンプト5大原則】
- 28:05 法則1:方向性を示す(ロールプレイング)
- 31:33 法則2:出力形式を指定する
- 33:39 法則3:例を示す(フューショット)
- 35:21 法則4:品質を評価する
- 36:39 AIにプロンプトを作らせる「メタプロンプティング」
- 37:44 ChatGPTとGemini、どっちが相性いい?
- 44:07 法則5:タスクを分割する
- 49:09 「黄金のプロンプト」は存在しない
- 52:54 サム・アルトマンが語るAI活用の鍵とは?
- 54:12 本質は「自分が何を求めているか」を言語化すること
- 55:20 プロンプトエンジニアはなぜセクシーと呼ばれる?
- 59:32 AIに暴言を吐くと嫌われる? AIポイントの話
- 1:00:20 AIに「ありがとう」は電力のムダ
- 1:04:38 しぶちょーの暴言プロンプトと、かねりんの落ち着き
今回の要チェックキーワード
- 「Few-Shot Learning」
- 少数の例を与えて、そこからパターンを学び、新しい入力にも対応させる手法。
- 「Zero-Shot Learning」
- 例を一切与えず、事前知識だけで未知のタスクを推論する手法。
- 「Chain of Thought(CoT)」
- 問題を一気に解くのではなく、思考の過程をステップごとに言語化して推論する手法。
- 「Meta-Prompting」
- AIに「良いプロンプトを作るための指示」を与え、自己改善的に最適な指示文を生成させる手法。 —----------------------------
この回でわかること(Q&A)
プロンプトエンジニアリングとは何ですか。
AIに自分が望む回答を出させるために、質問や指示の出し方を工夫することです。番組内では、2020年5月28日にOpenAI所属の技術者らが発表した論文がその始まりとされていると紹介されています。
フューショットプロンプティングとゼロショットプロンプティングの違いは何ですか。
フューショットは回答例をいくつか示してからAIに答えさせる手法です。一方、例を一切示さずにいきなり答えさせる方法はゼロショットと呼ばれ、例を一つだけ示す場合はワンショットと呼ばれます。
チェーンオブソートプロンプティングとは何ですか。
最終的な答えだけでなく、そこに至る思考の過程を例として示すことで回答精度を上げる手法です。「Let's think step by step」という一文を添えるだけで同様の効果が得られる、ゼロショットチェーンオブソートという手法も番組内で紹介されました。
丁寧なプロンプトより無礼なプロンプトの方が精度が高いというのは本当ですか。
番組で紹介された論文によると、無礼な言葉そのものが重要なのではなく、丁寧な表現は曖昧さや婉曲表現を含みやすくタスクの焦点がぼやける一方、命令的な文章はやるべきことが明確になりやすいためだと説明されています。
メタプロンプティングとは何ですか。
プロンプト自体をAIに考えさせたり、評価・改善させたりする手法です。番組では、欲しい最終結果をAIに伝え、それを出力するためのプロンプトを逆算して作ってもらう使い方が紹介されました。
関連リンク
- ・Language Models are Few-Shot Learners (論文)
- ・Chain of Thought Prompting Elucidates Reasoning in Large Language Models(論文)
- ・Large Language Models are Zero-Shot Reasoners(論文)
- https://amzn.to/3J23HVE
この回を聴く
「おちつきAIラジオ」は、日々のAIトピックを現役のAIエンジニア(しぶちょー)と元刑事のポッドキャストプロデューサー(かねりん)がやさしく解説する対談番組です。