なぜSuno AIは凄いのか?作曲AI60年の歴史を遡り、仕組みから著作権まで徹底解説 (ep.8)
おちつきAIラジオ 第8回(EP.008)/配信日: 2025.10.17/再生時間: 01:19:29
この回の概要
この回は、音楽生成AIがどのような技術で曲を作っているのかを、1960年代のルールベース作曲から現在の拡散モデルまでの歴史をたどりながら解説する回です。聴くと、Suno AIなどの音楽生成AIがここ数ヶ月で急激に進化した技術的な理由と、AIが作った音楽の著作権が現状どう扱われているのかが分かります。
冒頭では、しぶちょーが話題の音楽生成ツールを紹介します。Suno AIのほか、画像生成のStable Diffusionを手がけるStability AIが作るStable Audio、日本発の音楽生成AIであるSOUNDRAWなどが挙げられ、AIによって「作曲の民主化」が進んでいることが話されます。かねりんはDTM(デスクトップミュージック)を学び始めた立場から、音楽生成AIはまだあまり活用していないと述べます。
続いてしぶちょーは、AI作曲の歴史を1960年代から順を追って解説します。最初期はルールベースと呼ばれる手法で、音楽理論やコード進行、キーといった規則をあらかじめプログラムに組み込み、乱数を使って曲を生成していました。これは厳密には機械学習ではなく、人が決めたルール通りにプログラムが動く仕組みだったと説明されます。
1990年代からは、生物の進化を模した遺伝的アルゴリズムによる作曲が登場します。ランダムに生成した曲を評価し、良いものを組み合わせたり突然変異させたりして世代を重ねることで、曲を少しずつ進化させる手法です。ただし一曲を作るのに膨大な計算量がかかるうえ、結果が似たような曲に収束してしまう課題もありました。2000年代以降はRNNやLSTMという再帰型のニューラルネットワークが使われるようになり、直前の音の流れを踏まえて次の音を予測する仕組みが導入されましたが、長期の記憶を保持できず、イントロやAメロからサビへの展開がうまく作れないという弱点がありました。
この弱点を解決したのが、2017年に発表されたTransformerという技術です。曲全体を見渡して重要な部分に注目できるようになったことで、GoogleはMagentaというライブラリでMusic Transformerを公開し、しぶちょー自身もPythonでコードを動かして作曲を試していたと振り返ります。当時開催されていた「AIミュージックバトル弁才天」というAI作曲の対決イベントも紹介され、2023年時点ではまだ着メロに近いレベルだったものを、参加者たちが創意工夫を凝らして競い合っていたことが語られます。
現在の音楽生成AIが急激に進化した核心は、拡散モデルと潜在拡散モデルの組み合わせにあるとしぶちょーは説明します。画像生成のStable Diffusionと同じ原理で、ノイズを加えた音から元の音を復元する過程を学習し、さらに濃縮還元ジュースに例えられるように、データを一度圧縮した潜在空間で処理することで計算量を抑えています。音楽は画像よりもデータ量が多く、メロディやコード、リズム、曲の展開といった多くの要素を同時に扱う必要があるため、画像よりも技術的な難易度が高いことも語られます。この拡散モデルと、入力側で使われるTransformerという二つの技術の組み合わせが、動画・画像・音楽などさまざまな生成AIが急速に進化した共通の基盤になっているという指摘が、今回の技術面のまとめとなります。
後半では著作権や法的な論点に話が移ります。Suno AIは大手レコード会社から学習データの利用を巡って訴訟を起こされている最中であり、音楽は画像以上に既存曲と似た結果が出やすいことがその一因だと説明されます。一方でSOUNDRAWはフリー素材の音源のみを学習に使っており、著作権面で安心して使えるサービスとして紹介されます。また、生成AIが作ったものは原則として著作権の対象外とされる一方、生成物を創作のためのツールとして使い、そこに本人の創作性が加わったと言える場合は著作物として認められる可能性があるという、現状の曖昧な線引きが語られます。
最後は人間の役割についての対話になります。しぶちょーは、生成AIの出力の質は使い手の知識やセンス以上にはならないという考えを述べ、既存のツールでは似通った無難な曲になりがちであり、人間があえて型を外れた選択をすることの価値が増していくとの見方を示します。かねりんは、AIの成果物をそのまま鵜呑みにせず、自分の判断や手直しを加える「魂を入れる」工程が伴って初めて創作と呼べるという結論に共感し、対談は締めくくられます。
目次(タイムスタンプ)
- 00:00 オープニング
- 00:37 今回のテーマは「誰でも音楽クリエイター?音楽生成の仕組み」
- 03:32 Suno AIだけじゃない!最近流行りの音楽生成AIツールたち
- 05:09 なぜAIは曲を作れるの?作曲技術の進化の歴史を深掘り!
- 06:03 AI作曲の原点!1960年代の「ルールベース」時代とは?
- 09:06 犬と猫を見分けるAI?ルールベースと機械学習の根本的な違い
- 13:32 生物の進化を応用!?「遺伝的アルゴリズム」を使った作曲法
- 18:14 次の音を予測するAIへ。「再帰型ニューラルネットワーク」の登場
- 23:31 長い曲は作れない?短期記憶しかできないAIの限界
- 25:17 救世主「トランスフォーマー」登場!AIの記憶力が劇的に向上
- 29:35 2年前はこんなレベルだった?AIミュージックバトル「弁財天」
- 34:37 なぜ急に進化した?画像生成と同じ「拡散モデル」の衝撃
- 36:38 音楽生成は画像より難しい?AIを賢くする「濃縮還元ジュース」理論
- 41:31 現代の音楽生成AIを支える「潜在拡散モデル」とは
- 44:02 今回のオチ:全てのAI進化は「2つの技術」につながっている
- 46:23 AIの脳みそは1つになる?「基盤モデル」とサービスの未来
- 50:46 Suno AIは訴訟中!?音楽生成AIの著作権と法的な問題
- 53:31 AIが作った曲は誰のもの?「創作」の定義と曖昧な線引き
- 58:15 安心して使える!日本発のクリーンな音楽生成AI「Soundraw」
- 1:01:31 AI時代、人間の役割は?生成AIの使い手を超えるものは作れない
- 1:06:01 AIが優等生だからこそ、人間に「ぶっ飛んだ発想」が求められる
- 1:08:04 人間とは何か?AIの進化が私たちに問いかける哲学的なテーマ
- 1:13:34 AIに魂を入れるということ。コピペで満足する人にならないために
- 1:16:16 エンディングトーク:腰を据えて学んで、魂を込めてこそ落ち着ける
この回でわかること(Q&A)
音楽生成AIのSuno AIはどんな技術で曲を作っているのですか?
拡散モデルと呼ばれる技術をベースにしており、ノイズを加えた音から元の音を復元する過程を学習しています。さらに計算量を抑えるため、データを圧縮した潜在空間で処理する潜在拡散モデルと、曲全体の重要な部分を捉えるTransformerを組み合わせて生成しています。
AI音楽生成の技術はいつから研究されているのですか?
1960年代のルールベース作曲から始まり、1990年代の遺伝的アルゴリズム、2000年代以降のRNN・LSTM、2017年のTransformer登場を経て、現在の拡散モデルに至るまで、約60年の歴史があります。
AIが生成した音楽に著作権は認められますか?
原則として、AIが生成しただけのものは著作権の対象外とされています。ただし、生成物を創作のためのツールとして使い、そこに本人の創作性が加わったと言える場合は著作物として認められる可能性があります。
音楽生成AIで著作権上のトラブルになっているサービスはありますか?
Suno AIは大手レコード会社から学習データの利用を巡って訴訟を起こされており、係争中です。音楽は画像以上に既存曲と似た曲調が出力されやすいことが問題視されています。
著作権面で安心して使える音楽生成AIはありますか?
日本発のSOUNDRAWは、学習にフリー素材の音源のみを使用しており、著作権面で安心して利用できるサービスとして紹介されています。
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「おちつきAIラジオ」は、日々のAIトピックを現役のAIエンジニア(しぶちょー)と元刑事のポッドキャストプロデューサー(かねりん)がやさしく解説する対談番組です。